人事担当者のための
任せる業務が増えないとき、職域拡大はいまの作業の次から見る。同じスキルの作業を並べました
「現状においては、チャレンジドの従事業務が限定的であり、新規業務の開拓が重要な課題の一つであると考えている。」
これは、高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、機構)の「障害者雇用事例リファレンスサービス」に載っている、サービス業・社員数28人の事例の「今後の展望と課題」の文です(2026年11月5日に確認)。「チャレンジド」は、この事例が障害のある社員を指して使う語です。
最初の作業を切り出して、障害のある社員を迎えた。その次に任せる作業が、増えていかない。このページは、その場面にいる人事担当者のためのページです。次の作業を、部署からでなく、いま任せている作業に要るスキルから探す手順を説明します。まだ最初の作業が見つかっていない場合は、先に「任せる仕事がない」とき、社内の作業を並べ直すを見てください。
1、「従事業務が限定的」から始める
機構の事例には、雇ったあとの課題として、業務の広がりを書いたものがあります。
製造業・社員数1,183人の事例は、今後の課題に次のように書いています。
「担当業務の拡大・作業量の確保も重要と考えられ、具体的に検討していく必要があると考えている。」
サービス業・社員数26人の事例の今後の展望と課題には、次の文があります。
「現在の業務のみならず、様々な分野で障害のある社員が活躍できるような職域拡大、そして、一人ひとりのキャリアアップを中長期的に考えていきたいと考えている。」
(いずれも機構「障害者雇用事例リファレンスサービス」より。2026年11月5日に確認)
3つの事例が書いているのは、いま任せている作業のほかに、何を足すかを考える必要がある、という点です。会社の規模は26人から1,183人まで違いますが、課題の置き場所は、雇ったあとの今後にあります。
2、大手法人の調査では約6割
人事システムの会社が、自社のシステムを使う大手法人の人事担当者に聞いた調査(76法人80名)があります。この調査では、職域の確保・拡大について「非常に難しくなっている」「やや難しくなっている」と答えた会社が、合わせて約6割でした。
同じ調査で、担う業務が「定型業務」6割以上と答えた企業は85.2%でした。具体的な業務には、「事務補助」「データ入力」「書類スキャン」などが挙がっています。課題で最も多かったのは「業務の創出(切り出し)」で、次いで「現場理解」でした。
ここに書いた数は、この調査に答えた76法人80名の範囲の数です。日本の会社全体の割合を示す数ではありません。調査の出所は、このページの最後の出典の節に書きました。
3、事例は何を足したか
製造業・社員数1,183人の事例は、業務の拡大で足した作業を書いています。
「具体的には、スキャン作業、CAD作業、取扱説明書の作成、工場見学の準備と片付けなどである。」
受け方の工夫も書かれています。
「拡大を進める際には余裕をもって作業できるように、基本的に短納期以外の業務を受け入れるようにした。」
ある部門からスキャン作業を受けた際には、その部門の社員がモデルになって、作業の手順を動画で撮ったとも書かれています(要旨)。
サービス業・社員数28人の事例は、作業の足し方を次のように書いています。
「業務が非効率になることがあっても、担当する業務以外の業務にもできるだけ触れさせる機会を設けるようにしている。」
例として、ふだんは清掃業務に従事する社員が、パソコン入力作業、オフィスサービス業務の応援、厚生施設での受付業務を担う形が書かれています(要旨)。
足し方が書かれているのは、この2本です。サービス業・社員数26人の事例は、上の課題の文までで、何をどう足したかは書かれていません。この1本から、足し方は言えません。
2本に書かれた作業も、その会社の仕事に合わせた作業です。どの会社にも同じ作業がある、とは言えません。
4、次の作業をスキルから探す
障害者職業総合センターの調査研究報告書No.133(2017年3月)は、職務をつくる方法の1つとして「積み上げモデル」を挙げています。要旨は、雇用を始める時点では既存の職務の中から作業を切り出して限定的な職務を担当し、そこから作業を次第に積み上げていく、というものです(2026年11月5日に確認)。いま任せている作業の次を探す段階は、この「積み上げる」側にあたります。ただし、この報告書の題は「精神障害者及び発達障害者の雇用における職務創出支援に関する研究」です。当サイトの表の作業が、報告書の対象に当てはまるかどうかは、報告書からは言えません。
当サイトの224作業のページには、「要るスキル」の欄があります。次の作業を探す手がかりに、この欄を使います。
例として、「データ入力」の作業ページを開くと、データの欄に次のように出ています(データ入力)。
- 部署:全部署共通
- 動き:入力する
- 機密度:低
- 要るスキル:文字入力・データ入力
この作業をいま任せているなら、探す手がかりは「文字入力・データ入力」です。トップページの「必要なスキルからさがす」の節で、このスキルが要る作業は36作業あります。数え方は、1つの作業に2つのスキルがあるものは、両方に数えています。
同じスキルの作業は、同じ部署に固まっているとは限りません。別の部署のページに並んでいます。
5、同じスキルの作業
3つのスキルについて、機密度が低く、在宅の札が「出社の条件なし」の作業を、部署が重ならないように5件ずつ並べました。順位ではありません。各スキルの作業は、表に載せた以外にもあります。
文字入力・データ入力(36作業・18部署。うち機密度が低く札が「出社の条件なし」は27作業)
| 作業の名前 | 部署 | 動き | 機密度 | 在宅の札 | 作業ページ |
|---|---|---|---|---|---|
| データ入力 | 全部署共通 | 入力する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 求人媒体への入力 | 採用事務 | 入力する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| Web・ブログの記事登録 | マーケティング・広報事務 | 入力する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 商品情報の登録更新 | Webサイト・EC運営事務 | 入力する・整える | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 点検結果の入力 | 品質管理・コンプライアンス事務 | 入力する・照合する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
この表で分かることは、同じスキルの作業が、採用、広報、EC運営、品質管理と、別の部署に並んでいることです。「点検結果の入力」は、動きに「照合する」も入っていて、次の表にも出てきます。
見比べて違いを見つける(24作業・13部署。うち機密度が低く札が「出社の条件なし」は16作業)
| 作業の名前 | 部署 | 動き | 機密度 | 在宅の札 | 作業ページ |
|---|---|---|---|---|---|
| 二つの資料の照合 | 全部署共通 | 照合する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 価格・在庫・掲載内容の照合 | Webサイト・EC運営事務 | 照合する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 重複確認 | マスターデータ管理 | 照合する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 点検結果の入力 | 品質管理・コンプライアンス事務 | 入力する・照合する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 発送状況確認 | 物流・在庫管理事務 | 照合する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
この表で分かることは、動きが「照合する」の作業が中心で、物流、マスターデータ、EC運営といった部署に分かれていることです。「価格・在庫・掲載内容の照合」は、次の表にも出ます。要るスキルが2つある作業だからです。
台帳・管理表の更新(19作業・12部署。うち機密度が低く札が「出社の条件なし」は14作業)
| 作業の名前 | 部署 | 動き | 機密度 | 在宅の札 | 作業ページ |
|---|---|---|---|---|---|
| PC・備品台帳 | 情報システム事務 | 記録する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 価格・在庫・掲載内容の照合 | Webサイト・EC運営事務 | 照合する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 課題管理表 | プロジェクト・PMO補助 | 整える | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| 受注・出荷データ入力 | 物流・在庫管理事務 | 受け取る・入力する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
| KPI管理表 | 経営管理・会議運営補助 | 整える・集計する | 低 | 出社の条件なし | 開く |
この表で分かることは、「台帳・管理表の更新」というスキルが、備品、プロジェクト、受注、経営管理と、動きも部署も違う作業に要る、ということです。名前に「台帳」「管理表」が付かない作業も入っています。
6、表から分からないこと
表が見せるのは、探す候補の範囲までです。次のことは、この表から分かりません。
1、その人が、その作業をできるかどうか。同じスキルの欄が付いていても、できるかどうかは言えません。
2、本人の希望や、得意・不得意。表にその欄はありません。このページは、障害の種類や特性と作業を結びつけません。
3、社内の手順。作業の手順、使う社内のシステム、判断の線は、会社ごとに違います。作業ページの説明は、一般的な形です。
4、在宅の札の中身。札は、作業の説明に「紙」「スキャン」「電話」「名刺」「会議への出席」が書かれているかで付けています。社内の情報管理の決まりや端末は見ていません。札の読み方は、テレワークと出社の併用は、作業ごとに分けて見るに書きました。
表は、探す範囲を狭めるための道具です。表に載っているから任せられる、とは言えません。
7、社内の話し合いの材料として
先ほどの調査では、「配属先の部署・担当者が主導して業務を割り当てている」と答えた会社が、約7割でした(76法人80名の範囲の数です)。
機構の「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」は、採用計画について、次のように答えています。
「社内の状況を分析し、障害者雇用の目的を明確にした上で具体的に採用計画を検討し、社内の共通認識を得た上で進めることが必要です。」
社内の共通認識を得る場面で、作業の名前、部署、動き、機密度、在宅の札が並んだ表は、話す時の材料になります。表をどう使うかは、各社の進め方によります。
8、雇ったあと、仕事が足りないという質問
Q&Aサイトには、雇ったあとの仕事の用意について、立場の違う質問が出ています。要旨だけを書きます。
1、人事の立場から、雇用率の不足を解消するために、障害のある人向けの新しい仕事をどう作るかを問う質問。
2、障害者雇用の受け皿になっている部署の同僚の立場から、仕事の用意をどうするかを問う質問。
3、同じく受け入れ側の同僚の立場から、周りで仕事を作っている状況がいつまで続くのかを問う質問。
質問の数は3件で、全体の割合を示すものではありません。
9、自社でやる手順
1、いま任せている作業を書き出します。
2、その作業のページを開き、「要るスキル」の欄を見ます。
3、トップページの「必要なスキルからさがす」の節で、同じスキルの作業を見ます。
4、機密度と在宅の札を見ます。機密度で分ける手順は、自分の部署の中だけで1人分を探すに書きました。
5、気になった作業に、計算表で印を付けます。分数と回数を入れて足し上げる手順は、切り出した作業の量を見積もるに書きました。
手順の途中で、社内の誰かに確認する場面が出ます。節6で書いたとおり、表から分からないことは、社内で確かめます。
10、公的な相談先
厚生労働省の委託事業「障害者のテレワーク雇用に関する無料相談窓口(企業向け)」のよくある質問には、次のように載っています(2026年11月5日に確認)。
- 費用:「厚生労働省委託事業であり、無料でご相談いただけます。」
- 回数:「原則、5回までの実施となります。」ただし、令和9年3月末までに終了する必要があります。
- 初回の準備:「特段必要ございません。課題やお困りごとを整理いただければと思います。」
終了期限が令和9年3月末と決まっているため、使うかどうかを考える場合は、窓口のページで最新の案内を確かめてください。雇用率の算定や制度の細かい点は、厚生労働省と機構の原文を見てください。
11、次に見るページ
- 「任せる仕事がない」とき、社内の作業を並べ直す:最初の切り出しの話です。
- 切り出した作業の量を見積もる:分数と回数を足し上げる手順です。
- 自分の部署の中だけで1人分を探す:機密度で分ける手順です。
- テレワークと出社の併用は、作業ごとに分けて見る:在宅の札の読み方です。
- 計算表:作業に印を付けて、週の合計を数えます。
12、出典と調べた日
1、高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用事例リファレンスサービス」サービス業・社員数28人の事例 https://www.ref.jeed.go.jp/2023/2023523.html 2026年11月5日に確認
2、同 製造業・社員数1,183人の事例 https://www.ref.jeed.go.jp/2023/copy_of_2023511.html 2026年11月5日に確認
3、同 サービス業・社員数26人の事例 https://www.ref.jeed.go.jp/2023/2023513.html 2026年11月5日に確認
4、Works Human Intelligence 調べ「障がい者雇用の実務運用に関する調査」(調査期間2026年4月15日〜5月29日・有効回答76法人80名) https://www.works-hi.co.jp/news/20260827 2026年11月5日に確認
5、障害者職業総合センター 調査研究報告書No.133「精神障害者及び発達障害者の雇用における職務創出支援に関する研究」(2017年3月) https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/p8ocur0000000o3f-att/houkoku133.pdf 2026年11月5日に確認
6、高齢・障害・求職者雇用支援機構「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」2(1)障害者雇用の計画(採用計画) https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003koma.html 2026年11月5日に確認
7、厚生労働省の委託事業「障害者のテレワーク雇用に関する無料相談窓口(企業向け)」 https://twp.mhlw.go.jp/ 2026年11月5日に確認
8、当サイトの224作業のスキル・件数・表の15行 2026年11月5日に確認