障害者雇用の業務切り出し

人事担当者のための

テレワークと出社の併用は、作業ごとに分けて見る。紙・電話・会議でつながる19作業

「現在の障害者を雇用する部門のフロアが手狭なので、今後はテレワークも取り入れていきたい。コミュニケーションなどの課題を解決する方法や、テレワークにあった人材の選び方を知りたいのですが。」

これは、厚生労働省の委託事業「障害者のテレワーク雇用に関する無料相談窓口(企業向け)」が、企業からのお困りごとの例として載せている文です(サービス業・従業員19,000人規模の例。2026年11月5日に確認)。同じ窓口のセミナー案内には、「ただでさえ障害者雇用は難しそうなのに、テレワークだともっと難しいのは?」という不安も載っています。

すでに障害者を雇用する部門があり、テレワークを取り入れたい、という相談です。このページは、その時に使える見方を1つ説明します。人や部署でなく、作業の単位で見る、という見方です。

1、人や部署でなく、作業の単位で見る

「テレワークか出社か」を部署ごとに決めようとすると、同じ部署の中に札の違う作業が混ざります。たとえば人事・総務事務は、10作業のうち7作業が出社の条件なし、3作業が条件つきで在宅です。

このサイトは、会社にある事務の作業224件を、25部署に分けて並べています。そのすべてに、次の3段の札を付けました。

札は、作業の説明に「紙」「スキャン」「電話」「名刺」「会議への出席」が書かれているかで決めています。札の決め方の全文は、トップの「在宅でできるか」の節にあります(トップページ)。このページでは、出社の条件なし以外の19作業、つまり条件つき15件と出社が要る4件に絞って、何が出社につなぎ止めているかを見ます。

2、出社につなぎ止めている物は、紙・電話・会議

19作業の条件を数えると、つなぎ止めている物は4つに分かれました。紙の原本とスキャナーが4件、紙やスキャン済みのデータの受け渡しが5件、電話が8件、会議が2件です。作業ページは、各表の右端から開けます。

紙の原本とスキャナー(4件)

作業の名前部署動き機密度在宅の札在宅の条件在宅からつなぐ物作業ページ
書類のPDF化・データ化全部署共通入力する低出社が要る紙の原本・スキャナー表計算・メールなど一般的な道具開く
領収書のPDF化経理補助入力する低出社が要る紙の原本・スキャナー表計算・メールなど一般的な道具開く
スキャンとPDF化データ入力・照合入力する低出社が要る紙の原本・スキャナー表計算・メールなど一般的な道具開く
契約書のPDF化と保存文書・契約管理整える中出社が要る紙の原本・スキャナー表計算・メールなど一般的な道具開く

この表で分かることは、「出社が要る」の4件が、4件とも紙の原本とスキャナーの作業だということです。機密度は、低が3件、中が1件です。

紙やスキャン済みのデータの受け渡し(5件)

作業の名前部署動き機密度在宅の札在宅の条件在宅からつなぐ物作業ページ
フォルダへの保存全部署共通整える低条件つきで在宅スキャン済みのデータの受け渡し表計算・メールなど一般的な道具開く
マニュアルへの転記全部署共通入力する低条件つきで在宅紙のメモの受け渡し(画像・スキャン)表計算・メールなど一般的な道具開く
チェックリスト回収品質管理・コンプライアンス事務受け取る・照合する低条件つきで在宅紙のチェックリストの受け渡し(画像・スキャン)表計算・メールなど一般的な道具開く
紙資料のデータ入力データ入力・照合入力する低条件つきで在宅紙の資料の受け渡し(画像・スキャン)社内のシステム開く
名刺情報の入力秘書・調整サポート入力する中条件つきで在宅名刺の現物の受け渡し(画像・スキャン)社内のシステム開く

この表で分かることは、5件とも、条件が「受け渡し」だということです。紙の現物そのものではなく、画像やスキャン済みのデータが手元に届くことが、在宅の条件になっています。

電話(8件)

作業の名前部署動き機密度在宅の札在宅の条件在宅からつなぐ物作業ページ
機器の貸出返却記録情報システム事務記録する低条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)社内のシステム開く
備品の貸出返却の記録人事・総務事務記録する低条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具開く
各種申請書の受付と分類人事・総務事務受け取る低条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具開く
押印申請の受付人事・総務事務受け取る低条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具開く
注文書の受付と分類営業事務受け取る低条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具開く
購買申請の受付購買・発注事務受け取る低条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具開く
折り返し依頼の記録顧客対応事務記録する中条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具開く
電話の一次受付(クラウド電話が要る)顧客対応事務受け取る中条件つきで在宅クラウド電話表計算・メールなど一般的な道具開く

この表で分かることは、8件のうち7件の条件が「電話の転送(チャットなら不要)」で、残る1件だけが「クラウド電話」だということです。電話が条件になっている作業は、受け取る・記録するという動きに集まっています。

会議(2件)

作業の名前部署動き機密度在宅の札在宅の条件在宅からつなぐ物作業ページ
議事録・文字起こし全部署共通記録する低条件つきで在宅会議へのオンライン参加表計算・メールなど一般的な道具開く
議事録プロジェクト・PMO補助記録する低条件つきで在宅会議へのオンライン参加表計算・メールなど一般的な道具開く

この表で分かることは、会議が条件になっている作業が、議事録の2件だけだということです。条件は「会議へのオンライン参加」です。

19作業を機密度で見ると、低が15件、中が4件で、高はありません。19作業がある部署は、25部署のうち12部署です。残りの13部署は19作業が0件ですが、それは作業の説明に紙・電話・会議が出てこなかったという意味です。その部署の作業が全部在宅でできるという意味ではありません。

3、紙の話は2段になっている

紙の4件と5件は、表を並べると関係が読めます。「出社が要る」の4件は、紙の原本をスキャナーで画像やPDFにする作業です。「条件つきで在宅」の5件は、画像やスキャン済みのデータを受け取って、入力や転記、照合、保存をする作業です。

つまり、紙が会社に届く限り、紙を画像にする作業は誰かが引き受け、その先の入力や整理は、画像を受け取れることが在宅の条件になっている、という並びが、札から読み取れます。ここまでが、札から言えることです。その紙の作業を誰が担うかは、札からは分かりません。社内で決めることです。

4、電話の話は、受付の手段で条件そのものが変わる

電話の8件のうち7件は、条件に「チャットなら不要」と書いてあります。同じ作業でも、受付の手段が電話ならば電話の転送が要り、チャットならその条件がなくなる、ということです。作業そのものは変わらず、受付の手段が変わると条件が変わります。

窓口の解説ページは、在宅勤務者の「電話取次の方法」などを明確にしておくことで、「様子が分からないから業務を頼みづらい」などのコミュニケーションロスを避けられる、と説明しています(2026年11月5日に確認)。電話の受け方を在宅の側にどう決めておくかは、窓口の解説が扱っている論点でもあります。

5、205件は「確かめた」のではない

ここで、この札の限界を書いておきます。

205件の「出社の条件なし」は、作業の説明に紙・スキャン・電話・名刺・会議への出席が出てこなかった作業です。在宅でできると確かめた作業ではありません。説明に書かれていないだけで、自社では紙で届く、電話で受ける、会議に出る、ということは十分ありえます。

そのため、205件の側も、自社では次の3つで見直してください。

あわせて、社内の情報管理の決まり、システムへのつなぎ方、端末、見守り方は、会社ごとに違います。在宅にできるかどうかは、札ではなく、自社の事情で決まります。205件のうち、在宅から何につなぐかは、表計算・メールなど一般的な道具が155件、社内のシステムが24件、管理画面が9件、マスターデータが9件、会議室の予約が3件、予定表が2件、会計ソフトが1件、採用管理システムが1件、在庫システムが1件です。つなぐ物が社内のシステムや管理画面の作業は、自社のシステムが在宅から使えるかによって変わります。

6、札が分けるのは、作業の側だけ

この札が分けているのは、作業の側です。働く人の側ではありません。

冒頭のお困りごとに対して、窓口のアドバイスは次のとおりです。「テレワークに向いている人材の特性を説明するとともに、出勤かテレワークかの選択は本人の希望を十分に考慮することが大切であると説明。」(窓口のトップページ「お悩み解決例」より。2026年11月5日に確認)

作業の札を見て、人の働き方を決めることはできません。作業の札は、その作業を在宅で扱う時に何が要るかを見るためのものです。テレワークに向いている人材の特性は、窓口のページが説明しています(窓口の解説ページ)。このサイトでは扱いません。

7、自社でやる手順

次の4つの手順で、自社の作業を見直します。

1、部署のページを開く。自社にある作業が多い部署のページを、トップの「部署からさがす」から開きます。

2、作業ごとに、紙・電話・会議の3つで見直す。紙で届くか、電話で受けるか、会議に出るか。205件の側も、19作業の側も、同じ3つで見ます。

3、札と違う所を書き留める。札は「出社の条件なし」でも、自社では紙で届く作業や、電話で受ける作業があれば、書き留めます。

4、計算表に進む。自社にある作業に印を付け、分数と回数を入れて、週の合計時間を数えます。足し上げる手順は、量を見積もるページにあります。

8、社内の共通認識と、公的な相談先

高齢・障害・求職者雇用支援機構の「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」は、採用計画について、次のように答えています。

「社内の状況を分析し、障害者雇用の目的を明確にした上で具体的に採用計画を検討し、社内の共通認識を得た上で進めることが必要です。」(2026年11月5日に確認)

作業の札を使った見直しは、この「社内の状況を分析」する段階の材料になります。見直した結果は、受け入れる部署や経営と話す時の材料になります。

テレワークを考える理由の1つに、通勤圏内の人数があります。窓口の記事は、「確かに、地域によっては通勤圏内で就労意向のある障害者の数がそれほど多くなく、高スキルの人材がいない可能性もあります。」と書いています(2026年11月5日に確認)。

厚生労働省の委託事業の無料相談窓口は、「厚生労働省委託事業であり、無料でご相談いただけます。」としています。回数は「原則、5回までの実施」で、「令和9年3月末までに終了する必要がございます」とあります。初回の準備は「特段必要ございません。課題やお困りごとを整理いただければと思います。」とのことです(以上、2026年11月5日に確認)。

9、次に見るページ

10、出典と調べた日

1、厚生労働省の委託事業「障害者のテレワーク雇用に関する無料相談窓口(企業向け)」トップページ(お悩み解決例・よくある質問) https://twp.mhlw.go.jp/ 2026年11月5日に確認

2、同窓口 セミナー案内 https://twp.mhlw.go.jp/useful/useful04.html 2026年11月5日に確認

3、同窓口 解説ページ https://twp.mhlw.go.jp/case/case02.html 2026年11月5日に確認

4、同窓口 解説ページ(テレワークに向いている人材の特性) https://twp.mhlw.go.jp/case/case04.html 2026年11月5日に確認

5、同窓口 お役立ち情報 https://twp.mhlw.go.jp/useful/useful01.html 2026年11月5日に確認

6、高齢・障害・求職者雇用支援機構「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」2(1)障害者雇用の計画(採用計画) https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003koma.html 2026年11月5日に確認

7、当サイトの224作業の札と件数 2026年11月5日に確認