障害者雇用の業務切り出し

人事担当者のための

自分の部署の中だけで1人分を探す。人事部門の28作業を例に、機密度で分ける

厚生労働省の委託事業の相談窓口のページには、企業の困りごととして、次の一文が並んでいます。

「障害のある人向けに切り出す仕事がない」

(厚生労働省の委託事業「障害者のテレワーク雇用に関する無料相談窓口(企業向け)」の公開ページより)

同じ窓口の「お役立ち情報」には、次の見出しがあります。

「障害者雇用の最大の課題は「頼む仕事がない」」

(同窓口「お役立ち情報」より)

高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、機構)の「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」にも、企業の声として、同じ種類の言葉が載っています。

「どのような仕事をしてもらったらいいかわからない」

(機構「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」の「職務内容の選定」より)

3つの言葉に共通しているのは、仕事を探す段階で止まっていることです。このページは、他の部署に話を持ちかける前に、自分の部署の中の作業だけで、切り出せる候補がどこまであるかを見る手順を説明します。例として、人事部門の採用事務・労務・勤怠事務・人事・総務事務の28作業を、機密度の低・中・高の3つに分けて並べました。自分の部署が人事部門でなくても、同じ手順で見られます。部署のページは25部署ぶんあります。ここでの1人分は、在宅の1人が受け持つ作業のまとまりのことです。このページは、どれから任せるかの答えを出しません。分けて並べるところまでを扱います。

1、他部署に頼む前に、自分の部署の作業を見る

機構のQ&Aは、職務内容の選び方を、次の見出しで答えています。

「社内にある職務内容やそれらの職務に求められるスキルなどについて詳細に確認し、職務内容を創出していくとよいでしょう。」

確認の対象は、社内にある職務内容と、その職務に求められるスキルです。

障害者職業総合センターの調査研究報告書No.133(2017年3月)には、職務をつくる方法の1つとして「積み上げモデル」があります。要旨は、雇用を始める時点では既存の職務の中から作業を切り出して限定的な職務を担当し、そこから作業を次第に積み上げていく、というものです。自分の部署の作業から候補を探す段階は、このモデルの図でいう「既存の職務の中から作業を切り出す」入口にあたります。ただし、この報告書の題は「精神障害者及び発達障害者の雇用における職務創出支援に関する研究」です。このページの28作業が、報告書の対象の職務に当てはまるかどうかは、報告書からは言えません。

2、見る軸は2つ

自分の部署の作業を見るときの軸は、次の2つです。

機密度の意味と、在宅の札の決め方は、トップの「機密度の3段について」「在宅でできるか」の節に書いてあります。このページでは繰り返しません。ここで足すのは、28作業という具体的な並びです。

28作業の数は次のとおりです。

224作業全体の機密度は、低169件・中44件・高11件です。低の割合は、28作業では13件で半分に届かず、224作業全体では169件で4分の3ほどになります。並びが違う理由は、28作業からは言えないため、ここでは書きません。

3、人事部門の28作業を、機密度で3つに分ける

28作業の内訳は、採用事務9件、労務・勤怠事務9件、人事・総務事務10件です。表は機密度ごとに分けました。右端の欄から、作業ページが開けます。「動き」の欄で、2つの動きを持つ作業は、両方を書いています。

機密度「低」(13件)

作業の名前部署動き在宅の札在宅の条件在宅からつなぐ物見る範囲作業ページ
案内メールの作成送信採用事務連絡する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具—/w/案内メールの作成送信.html
求人媒体への入力採用事務入力する出社の条件なし—管理画面—/w/求人媒体への入力.html
選考状況一覧の更新採用事務整える出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具—/w/選考状況一覧の更新.html
入社書類の準備採用事務整える出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具—/w/入社書類の準備.html
備品の貸出返却の記録人事・総務事務記録する条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具—/w/備品の貸出返却の記録.html
社内通知メールの送信人事・総務事務連絡する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具—/w/社内通知メールの送信.html
各種申請書の受付と分類人事・総務事務受け取る条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具—/w/各種申請書の受付と分類.html
押印申請の受付人事・総務事務受け取る条件つきで在宅電話の転送(チャットなら不要)表計算・メールなど一般的な道具—/w/押印申請の受付.html
社内規程ファイルの整理人事・総務事務整える出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具—/w/社内規程ファイルの整理.html
入退社の届出書類の準備人事・総務事務整える出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具—/w/入退社の届出書類の準備.html
慶弔・給付の申請書の下書き人事・総務事務入力する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具—/w/慶弔-給付の申請書の下書き.html
アンケートの集計人事・総務事務集計する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具—/w/アンケートの集計.html
会議室・設備の予約管理人事・総務事務整える・期限を管理する出社の条件なし—会議室の予約—/w/会議室-設備の予約管理.html

この表で分かること 13件の部署の内訳は、採用事務が4件、人事・総務事務が9件で、労務・勤怠事務は0件です。「見る範囲」の欄は、13件とも空です。動きは「整える」が5件で最も多く、「連絡する」「入力する」「受け取る」が2件ずつ続きます。条件つきで在宅の3件は、すべてこの表の中にあります。

機密度「中」(12件)

作業の名前部署動き在宅の札在宅の条件在宅からつなぐ物見る範囲作業ページ
応募者情報の登録採用事務入力する出社の条件なし—社内のシステム個人情報など(機密度 中)/w/応募者情報の登録.html
履歴書のファイル整理採用事務整える・記録する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/履歴書のファイル整理.html
面接日程の候補作成採用事務期限を管理する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/面接日程の候補作成.html
面接記録の入力採用事務入力する・記録する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/面接記録の入力.html
内定者への定型連絡採用事務連絡する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/内定者への定型連絡.html
勤怠データの集計労務・勤怠事務集計する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/勤怠データの集計.html
打刻漏れの確認労務・勤怠事務照合する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/打刻漏れの確認.html
残業時間一覧労務・勤怠事務集計する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/残業時間一覧.html
有給休暇台帳労務・勤怠事務記録する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/有給休暇台帳.html
従業員名簿労務・勤怠事務整える出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/従業員名簿.html
入退社情報労務・勤怠事務記録する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/入退社情報.html
従業員名簿の更新人事・総務事務整える出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具個人情報など(機密度 中)/w/従業員名簿の更新.html

この表で分かること 12件の部署の内訳は、労務・勤怠事務が6件、採用事務が5件、人事・総務事務が1件です。「見る範囲」の欄は、12件とも「個人情報など(機密度 中)」で、在宅の札は12件とも「出社の条件なし」です。動きは「記録する」が4件で最も多くなっています。在宅からつなぐ物が社内のシステムなのは、応募者情報の登録の1件で、残る11件は表計算・メールなど一般的な道具です。

機密度「高」(3件)

作業の名前部署動き在宅の札在宅の条件在宅からつなぐ物見る範囲作業ページ
健康診断の対象者リスト労務・勤怠事務整える出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具健康(機密度 高)/w/健康診断の対象者リスト.html
社会保険手続き用データの準備労務・勤怠事務整える出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具社会保険(機密度 高)/w/社会保険手続き用データの準備.html
給与計算前のデータ確認労務・勤怠事務照合する出社の条件なし—表計算・メールなど一般的な道具給与(機密度 高)/w/給与計算前のデータ確認.html

この表で分かること 3件は、すべて労務・勤怠事務の作業です。見る範囲は、健康、社会保険、給与が1件ずつで、動きは「整える」が2件、「照合する」が1件です。3件とも在宅の札は「出社の条件なし」です。在宅の札は作業の説明の中身で決めた札で、機密度とは別の軸です。機密度が高いことは、この札には入っていません。

3つの表を並べると、同じ人事部門でも、部署によって機密度の並びが違うことが分かります。採用事務は低4件・中5件、労務・勤怠事務は中6件・高3件で低は0件、人事・総務事務は低9件・中1件です。部署のページを1つずつ見ると、この違いが見えます。

4、機密度が中・高の作業は、何を見る作業か

機密度が中の12件は、見る範囲が個人情報などです。高の3件は、見る範囲が健康、社会保険、給与です。この15件の作業ページには、共通した書き方があります。

15件のうち14件の作業ページは、履歴書のファイル整理のページと同じく、判断と承認は社内の担当者に残し、整理・保存や入力、集計といった動きだけを在宅の1人に切り出す形、と書いています。履歴書のファイル整理のページには、扱う内容に氏名や住所、経歴といった個人情報が含まれるため、という理由が添えられています。残る1件の従業員名簿の更新は、更新できる範囲や確認の手順を分けたうえで、判断は社内の担当者の手元に残す形、という書き方です。

この書き方が示しているのは、作業を在宅に切り出すときに、動きと判断を分けて見る、という見方です。判断と承認を社内の誰に残すか、どこまでの情報を見せるかは、作業ページには書けません。個人情報、給与、社会保険、健康の扱いの決まりは会社ごとに違い、このページも決まりの中身には触れません。社内の情報管理の決まりと担当は、社内で確かめることになります。

5、条件つきの3件をどう読むか

条件つきで在宅の3件は、備品の貸出返却の記録、各種申請書の受付と分類、押印申請の受付です。3件とも人事・総務事務の作業で、機密度は低、見る範囲の欄は空です。在宅の条件は、3件とも「電話の転送(チャットなら不要)」です。

作業ページによると、この3件は電話でのやり取りが前提になっているため、条件つきの札が付いています。「チャットなら不要」とあるとおり、受付がチャットで行われる会社では、この条件は要りません。224作業全体では、条件つきで在宅が15件あり、そのうち電話の転送が条件なのは7件です。その7件のうち3件が、この28作業の中にあります。

条件つきの作業は、一覧から外していません。自分の会社に電話の転送の仕組みがあるか、受付をチャットで受けられるかは、一覧からは分かりません。社内で確かめる点です。

6、自分の部署でやる手順

人事部門でなくても、手順は同じです。

1、自分の部署のページを開く。25部署のうち、部署の名前がいちばん近いページを開きます。合う部署が見つからないときは、全部署共通のページ(16件)もあります。

2、機密度の欄で、作業を低・中・高に分ける。部署のページの作業の表に、機密度の欄があります。

3、在宅の札を見る。条件つきの作業は、条件の中身(電話の転送など)を読みます。

4、自分の部署に実際にある作業に、印を付ける。一覧にあっても自分の部署に無い作業には、印を付けません。自分の部署にあっても一覧に無い作業は、計算表に行がありません。

5、計算表に分数と回数を入れて、週の合計を出す。入れる数は、自社の数です。足し上げる手順は量の見積もりのページに、シートの欄の説明は業務切り出しシートのページに書いてあります。

ここまでで分かるのは、自分の部署の作業のうち、一覧に載っている物が、機密度と在宅の札でどう分かれるかです。それが1人分の量になるかどうかは、5の分数と回数を入れるまで分かりません。機構の事例リファレンスサービスには、製造業・社員数1,183人の事例があり、今後の課題に次のように書いています。

「担当業務の拡大・作業量の確保も重要と考えられ、具体的に検討していく必要があると考えている」

(機構「障害者雇用事例リファレンスサービス」の製造業・社員数1,183人の事例より)

自分の部署の作業だけで量が足りるかどうかは、このページの28作業からは言えません。

7、社内の共通認識と、公的な相談先

機構のQ&Aは、採用計画の答えの中で、次のように述べています。

「社内の共通認識を得た上で進めることが必要です。」

(機構「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」の「障害者雇用の計画(採用計画)」より)

このQ&Aは採用計画全体への答えで、自分の部署の作業から探す場合を別に扱ってはいません。

雇ったあとの課題を書いた事例もあります。機構の事例リファレンスサービスにある、サービス業・社員数8人の事例の課題には、次の文があります。

「新たに障がい者を雇用しても、配属後のフォローができずに現場任せになってしまっているという課題があった。」

(機構「障害者雇用事例リファレンスサービス」のサービス業・社員数8人の事例より)

機構のQ&Aの「社内支援体制」の答えは、次のとおりです。

「採用後の職場定着を推進していくために社内支援体制を作り、職場の人間関係や労働環境の改善を図っていくと、より職場への定着が進みます。」

(機構「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」の「社内支援体制」より)

同じ答えの中で、体制づくりのポイントとして、配属部署の担当者、人事担当部署、支援機関との連携が挙げられています。

冒頭の相談窓口のよくある質問には、次の3つの答えがあります。

「厚生労働省委託事業であり、無料でご相談いただけます。」
「原則、5回までの実施となります。2回目以降のお打合せの頻度はお申込企業とご相談の上、決定いたします(ただし、令和9年3月末までに終了する必要がございます)。」
「特段必要ございません。課題やお困りごとを整理いただければと思います。」

(同窓口「よくある質問」より。順に、費用、回数と期限、初回の準備についての答え)

確認した2026年11月4日の時点で、書かれている期限までは5か月を切っています。そのほかの公的な相談先は、トップの「公的な相談先」の節に並べています。

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